ご無沙汰してます。
待ってる人がいるかは知りませんが、お待たせいたしました!
ScrapBlend、最新話です。
別作品の方もぼちぼち書いてはいますが、とりあえずこれからHP改装の続きやってきます!
昨日やろうと思ってたんだけど二日酔いでそれどころじゃry
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「唯那! 生きてるか!?」
「なんとか!」
隣の民間の屋根に着地し、凌次のあげた声に唯那が答える。
4人で背中合わせに立って死角をなくし、周囲を警戒する。
「なに、こいつら?」
「少なくとも、旅人用の夜のサービスってわけじゃなさそうだけど」
「ンなもんがあってたまるか」
「知らないのか鏡弥!? こういう町だとそれ専用の女の子が――」
「アホなこと言ってないの! くるよ!」
白兎と鏡弥のやりとりを唯那が叱りつける。同時に、近場の屋根の上に居た4体の『人形』が地を蹴った。
Scrap Blend
2杯目「大樹の上の孤城」
φ
Act3
凌次が吼え、鏡弥が疾り、唯那が舞い、白兎が跳ぶ。『人形』たちは、一体一体は大して強くない。しかし――
「多いなクソ……!」
「クケケケケャ!」
鏡弥の呟きを『人形』の笑い声がかき消す。
首をかき斬ろうと迫る凶刃の動きを磁力で止め――
「――っ!」
振り向き、真後ろから突っ込んできた人形に弾丸を放つ。
「皆、跳んで!」
白兎の声。理解するより早く、全員が宙に飛び出す。
「これでも……くらえ!」
声と共に白兎が投げた『それ』は、追いかけ飛び上がってきた『人形』に接触。
刹那、そこを中心に、衝撃波がほとばしる!
「音波弾か!」
「イエスっ!」
吹き飛んだ『人形』達が地面へと落下していくのを見ながら、四人は町の中心の、少し大きな屋敷の屋根へと着地した。
「……おかしい」
すぐさまその場を離れながら、凌次が呟く。
「住人のこと?」
気付いていたのか、唯那が言葉を繋いだ。
「こんだけドンパチやってるのに誰も出てこないのは……」
珍しく神妙な顔付きで、白兎が言う。
「皆アレに夢ちゅ」
「真面目にやれ」
鏡弥が白兎の言葉を遮り頭を叩く。
「皆が避難してるのか、それとも……」
「もう手遅れか、だな。」
凌次と鏡弥の言葉のあと、しばし四人が走る音だけが路地に響く。
ふと、疑問を口にしたのは唯那だった。
「なんで私たちは撃されたのかな? ヴァンパイアを狙ってきたから?」
「いや、そのことは町の人たちは知らな――」
白兎の言葉が終わるより早く。
「クケキォキォキォ!」
彼の真横の民家の窓から、『人形』が飛び出す。
「――いぃっ!?」
白兎が目を丸くしながらなんとか『人形』の攻撃を回避する間に、凌次の左腕が『人形』を吹き飛ばした。
「びっ……くりした……」
「家の中に居たってことは、ホントにもう……」
へたりこむ白兎を見ながら、唯那が呟く。
「とりあえず町から出よう。キリが――」
「待って」
凌次の提案を遮ったのは、腰を抜かして座り込んだ白兎だった。
Φ
「ったく情けないなお前は。」
「うるさいやい! いきなりあんなんきたらびっくりするわ!」
「はいはい、人の耳元で叫ばないの。」
白兎を背負った凌次を先頭に、4人は町を進む。
どうやら『人形』たちは機械的なセンサ等は持っていないようで、慎重に進むようになると遭遇率は一気に下がった。
「そんなことより、これからどうするの?」
「うーん、町で情報を集めるにしても、こんな状況じゃなぁ……」
「ヴァンパイアかどうかは知らんが、何か居るのは判ったけどな、身をもって。」
「やっぱり町を出――」
「待って」
ScrapBlendの3人の会話を、白兎が遮る。立ち止まる一同。
「ちょっとデジャヴを感じたけど、どうしたの?」
「いや、腰はもう大丈夫なんだけど。」
「じゃあ降りてよ。」
「楽なんだもん。」
「…………」
凌次は、その場で後ろ受身を取った。
鈍い音が響く。
「鏡弥のツッコミより数倍痛いっ!?」
「……で、何なの?」
非常に冷ややかな眼差しで、凌次が白兎に問う。
「いやあのですね……その『ヘタなこと言ったら殺す』って顔やめてくれませんかね……」
言った後、小さく深呼吸をひとつ。
まじめな顔になり、白兎が告げた。
「何か声がしたんだ。」
φ
兎の聴覚を持つ白兎を先頭に、『声』のする場所へと四人が駆ける。
要所要所に唯那の糸で罠を張りつつ、辿り着いたのは町はずれの井戸だった。
「いやいやいやいや……呪われたりしない? これ?」
「……んなわけない……はず」
流石にここまで近づけば、白兎の言う『声』は全員の耳に届いていた。
『オイデ』
『タスケテ』
『アソボ』
『シナセテ』
「……じゃ! 俺はここまでだ! 解体ガンブァッ!?」
白兎が言い終わる前に鏡弥の裏拳がその口をふさぐ。
「アホなこと言ってんな。どうみても当たりだろこれ。」
「すごーくホラーだけど……行くしかないよね」
なぜだかヤル気満々の鏡弥と凌次が、
「いやだぁぁぁ呪われるぅぅぁぁ」
「帰りたい……」
「おら行くぞヘタレども」
涙目で懇願する唯那と白兎の首根っこをひっ掴み、井戸の中へと放り投げる。
「帰らせてぇぇ――………」
「凌次の鬼ぃぃぃ――……」
二人の声が、井戸の底へと遠ざかって行く。
それを確認し、凌次と鏡弥も井戸の中へと飛び込んで行った。
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