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2024/05/09 (Thu) -

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Scrap Blend 2杯目 ACT2
2010/01/09 (Sat) - SclapBlend

久しぶりのScrapBlend更新です。
ジワリジワリと進行中。

======


「リー・ショウセン言うます。」
 とりあえずサラリーマンの傷の手当をし、2人組が戻ってくると困るので、ファミレスに移動して。
 名乗ったサラリーマン風の男は、どうやら西隣の国の出身らしい。
「はじめまして、解体屋『Scrap Blend』の長谷川凌次です。こっちが上白沢鏡弥、この子が翡翠坂唯那」
「んで俺が稲葉野白兎。オッちゃん感謝してくれよー、俺が助けたんだからな!」

 

 Scrap Blend
  二杯目 大樹の孤城
     -Vampic Castle Saga-


 



Act2

 

 一応、一通りの事情説明は車の中で聞いている。
「お客様、ご注文は?」
「じゃあ、君の瞳を……」
「はいはい、黙ろうね」
 ウェイトレスをナンパしかけた所で即座に入った凌次のツッコミに、意気消沈して沈み込む白兎。
「とりあえず、コーヒー5人分ください」
「か……かしこまりました」
 多少面食らった様子で、ウェイトレスが去っていく。
 その様子を見送って口を開いたのは、白兎だった。
「で! 何であんなことになってたのさ!?」
「そのやたら高いテンションどうにかなんねーのかお前は……」
「まぁ、こうじゃないとイナくんらしくないけどね」
 鏡弥が、唯那が。口々に言う中、サラリーマン――リーが口を開いた
「あノ時取引してたは……あル『札』です。」
「札?」
「そう。『ヴァンパイア』を制御すルための。」
 凌次の問いかけに答えたリーの言葉に、全員の表情が凍りつく。
「私の故郷の国、発見の報告があリました。 その調査のときにその『札』を手に入レたと」
「……取引相手は?」
「そレは……」
「気にすんな気にすんな!少なくとも俺らは敵じゃねーからさ!」
 凌次の問いに一瞬、迷ったように黙り込むリーの肩を叩きながら、相変わらずのテンションで白兎が言う。
「はい……。『札』の取引相手は……『ポリヘキサゴン』系列、『ビーハイブ』という組織です。」

φ

「着いた…遠かったね」
「経費自己負担じゃなくてよかったねぇ……飛行機と移動のバスだけでかなり掛かったと思うよ」
 唯那と凌次が言い合う。乗り物に弱い鏡弥と白兎は、酔ってそれどころじゃないようだが。

――お願いです、お金はいくらでも出します
――世界のためにあの『札』を……いや、『札』よりも『ヴァンパイア』を解体してください!

レンタカーに乗り、タバコに火をつけつつ、リーの言葉を思い出す
「『ポリヘキサゴン』が『ヴァンパイア』との契約を狙ってる……となると、やっぱり、合成人間に使うのかな」
「無いとは言い切れないね……」
 後部座席で呻く鏡弥と白兎はさておいて、車は小さな町へと辿り着く。
「リーさんの話だと、ここが拠点にいいみたい。時間が時間だし、一泊することになるかな」
「じゃあ俺は唯那ちゃんと同じ」
「却下」
「部屋……」
 みなまで言い終わる前に、唯那の鋭いツッコミを叩き込まれ、なぜか元気になった白兎が沈黙した。
「とりあえず、降りようか。白兎、起きたならついでに鏡弥お願いね」

 φ

 時間は大体、20時といったところか。夕食の時間だからか、小さな宿屋の食堂は賑わっていた。
「リーさんの話だとこの周辺の森にあるらしいんだけど……」
 テーブルの一つを占領し、地図を広げ、凌次が言う。
 ボールペンで指した現在地の周りには、北東西と森が広がっていた。
「……ここまで未開発の土地があったんだな、この国にも」
 飛行機酔いもすっかりさめた鏡弥が酒を片手に言う。
「どーすんの?今からでも行く?」
「あんたら、今から森に行くつもりかい?」
 唯那の言葉を聞きつけ、食堂のオバちゃんが口を挟む。
「やめといた方がいいよ、この時間は。見ての通りの未開発地帯だからねぇ
 オオカミとか熊とか……うわさじゃ吸血鬼も居るみたいよ」
「吸血鬼……ですか。ホントに居るんですかねぇ」
 オバちゃんの言葉に凌次が答える。彼女は頬に手を当て、首を横に振った。
「さぁねぇ……でも噂じゃ、血を吸われた死体が昔見つかったって話よ」

 φ

 その夜。
 結局、森の探索は夜があけてから、という話に収まった
 ちなみにその話をしている間、白兎は隣テーブルの合コンに参加していたらしい
「流石に二次会とお持ち帰りはダメだよな?」
 その発言から1秒も経たず、白兎は無言で鏡弥に張り倒された。
「………」
 時間を確認するため取り出した携帯電話は、『0:42』と告げていた。
 何故だろうか、凌次は眠れずに居た。
 そこそこ酒も飲み、ある程度眠気がきていたはずなのだが……なぜか眠れない。
 沈黙し、色々と考えていたときだった。

 ギシ……

「……?」
 微かだが、確かに足音らしき音が聞こえる。殺気を隠した忍び足。
「凌次」
 木製の薄い壁際越しに、唯那の声が聞こえてくる。壁を2度、軽く叩くと、壁の向こうで立ち上がる音がした。
 鏡弥と白兎も既に立ち上がり、迎撃体勢をとっている。そっと扉が開き、そして――
「――やばい、外に飛べ!」
 白兎の声。反射的に地を蹴り、窓を割って飛び出たその刹那。
 衝撃音と共に、投げ込まれた手榴弾が爆発、宿屋2階の一室を吹き飛ばした。
「っ……何だ!?」
「ケケケケケケケ!」
 鏡弥の声を遮り、けたたましい叫び声が煙を割って飛び出してきた
 今の爆発のせいか、もともとなのか、それはよくわからないが、『それ』はボロボロですすけた服を着ていた
 まるで服を着た人形のようだが、その顔の外装は半分が剥げ落ちているし、腕は鉄製の骨が――
「っ!?」
 観察している間に、『人形』がその腕をラリアットのように凌次の首へと滑らせてくる。
 骨組みだと思っていたのは、どうやら刃らしい。
「な、何だこりゃ!?」
 白兎の叫び声。目の前の『人形』を蹴り飛ばして、振り向き――その光景に目を見開く。
 鏡弥も、唯那も、立ち尽くしていた。彼らの向く先には――
 軽く100は居るだろうか。町の民家の屋根に、『人形』達が並んでいた。

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